化学物質のリスクアセスメントの書き方
記録に要るのは4項目、様式は自由
1.実施する時期は3つ
リスクアセスメントを行うのは、次のときです(労働安全衛生規則第34条の2の7第1項)。
- 対象の化学品を原材料などとして新しく使う、または変えるとき
- 対象の化学品を製造・取り扱う業務の作業の方法や手順を新しく採用する、または変えるとき
- そのほか、対象の化学品の危険性・有害性が変わった、または変わるおそれがあるとき
3つ目の例として、国の指針は「SDSの危険性・有害性の情報が変わり、その内容が提供されたとき」と「濃度基準値が新しく決まった・変わったとき」を挙げています。仕入れ先からSDSの改訂が届いたら中身を確かめ、危険性・有害性の情報が変わっていれば、リスクアセスメントを行います。連絡先の変更だけのような改訂とは区別します。
2.手順は5段階
国の指針(化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針、令和5年4月27日改正)は、次の順に進めるとしています。
- 危険性・有害性を特定する(SDSを見る。いつもの作業だけでなく、清掃や修理のような非定常の作業も含める)
- リスクを見積もる(次の章の方法で。濃度基準値が決まっている物質を屋内で扱う場合は、基準値を超えるおそれがあるかも見ます)
- リスクを下げる措置を検討する
- 措置を実施する(第577条の2のばく露を減らす義務を含め、法令で決まっている措置は義務。それを超える追加の措置は努力義務)
- 結果を記録し、保存し、働く人に知らせる
始める前に、対象の作業を洗い出し、SDS、作業手順書、設備の資料をそろえておくと進めやすくなります。
3.リスクの見積もり方
見積もりのやり方は1つではありません。指針が示す方法と、厚生労働省が公開している支援ツールの例を紹介します。どれを使うかは、作業や物質に合うかを確かめて選びます。
- CREATE-SIMPLE(クリエイト・シンプル):厚生労働省が「職場のあんぜんサイト」で無料公開しているExcelのツールです。取扱量、含有率、換気、作業時間などを選ぶと、吸入・経皮吸収による健康リスクと危険性の目安が出ます。測定機器がない事業場でも始めやすい選択肢です。
- 実測:作業環境測定の評価値を管理濃度と比べる方法、個人ばく露測定の濃度を濃度基準値やばく露限界と比べる方法などがあります。測定と評価の方法に合った基準と比べます。検知管やリアルタイムモニターを使うための支援シートも公開されています。
- マトリクス表:けがや病気の起こりやすさと重さを表にして、区分を決めます。
- 業種別のシート:工業塗装、オフセット・グラビア印刷、めっき向けのシートが公開されています。
厚生労働省版の「コントロール・バンディング」は提供が終わっています(職場のあんぜんサイトの表示、2026年10月29日に当社が確認)。古い資料に載っていても、いまはCREATE-SIMPLEなどを使います。
4.記録の書き方(ここが本題)
記録しなければならないのは、次の4項目です(労働安全衛生規則第34条の2の8)。
| 記録する項目 | 記入例(架空の例) |
|---|---|
| ① 対象物の名称 | 洗浄用の有機溶剤(製品A)。評価した成分の名前(CAS番号などは必要に応じて)をSDSの第3項から書き写す |
| ② 業務の内容 | 部品の手拭き洗浄。第2工場の洗浄台。1回約200mL、1日30分、毎日。窓あり・局所排気なし |
| ③ リスクアセスメントの結果 | CREATE-SIMPLEで評価。評価した成分ごとに、吸入・経皮吸収・危険性の結果(ツールの区分をそのまま)と、入力した条件、出力レポートの保存先を書く |
| ④ 結果にもとづいて講ずる措置の内容 | 代わりの溶剤・密閉・局所排気を先に検討し、設置の時期を決める。それまでの間は、対象物質と濃度に合った呼吸用保護具と、透過しにくさを確かめた手袋を選んで使う。下げきれないと分かれば作業を見合わせる |
記入例は書き方を示すための架空のもので、実際に評価した結果ではありません。有機溶剤中毒予防規則などほかの規則が適用される物質では、そこで決められた措置を先送りできません。
- 様式は決まっていません。厚生労働省の「リスクアセスメント実施レポート(結果記入シート)」や、CREATE-SIMPLEが出す「実施レポート」「結果一覧」も、記録として使えます(厚生労働省Q&A Q13-2)。行政への提出は要りませんが、労働基準監督署などから見せるよう求められることがあります。
- 保存期間は、その記録のリスクアセスメントを行った日から3年間と、次のリスクアセスメントを行うまでのうち、長いほうです(第34条の2の8)。その化学品を使うのをやめた場合、以降の保存は要りません(Q13-4)。
- 働く人に知らせる:4項目は、製造・取り扱う業務に就く人に、作業場の見やすい場所への常時の掲示・備え付け、書面の交付、作業場でいつでも見られるパソコンなどのいずれかで周知します(Q13-3)。
この4項目と保存期間は、第34条の2の8のリスクアセスメントの記録の話です。これとは別に、第577条の2で、ばく露を減らす措置の状況などを1年以内ごとに記録し3年間(がん原性物質に関わる一部は30年間)保存する決まりがあります。化学品の使用をやめたときに保存が要らなくなるのは、リスクアセスメントの記録の話で、こちらの記録には広げないでください。
法令で求められるのは4項目ですが、実施日、実施した人、評価に使ったSDSの版、措置の担当と期限も残しておくと、次の見直しや監督署への説明が楽になります。
5.結果を受けてやること
リスクアセスメントの結果などにもとづき、代わりの物への切り替え、密閉、換気、作業方法の改善、保護具などで、働く人がその化学品にさらされる程度を最小限にする義務があります。濃度基準値が決まっている物質を屋内で扱う場合は、働く人のばく露の程度を濃度基準値以下にする義務もあります(労働安全衛生規則第577条の2)。
リスクアセスメントの実施そのものには罰則はありませんが(この説明は実施そのものに限った話です)、実施すべきときにしていなければ法律違反になり、労働基準監督署の指導の対象になります(Q14-1)。
6.リスクアセスメント記録シート(無料)
上の4項目(赤い見出し)に、実施日・実施者・実施した理由・参照したSDSの版・見積もりの方法・措置の担当と期限・周知の方法・次回の見直し予定日を足したExcelです。第34条の2の8の記録用です。記入例の行と、2枚目に使い方があります。登録やメールアドレスの入力は要りません。
リスクアセスメント記録シート(Excel・100件)をダウンロード
化学品の台帳にはSDS管理台帳のExcelひな形、小分け容器には小分け容器ラベルのひな形もあります。
出典:労働安全衛生規則第34条の2の7・第34条の2の8・第577条の2(e-Gov法令検索)、化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針、厚生労働省 化学物質対策に関するQ&A(リスクアセスメント関係)Q13-2〜Q13-4・Q14-1、職場のあんぜんサイト(いずれも2026年10月29日に当社が確認)。
件数が増えてきたら
当社の化学物質管理アプリは、作業条件を選ぶと、CREATE-SIMPLEの設計基準をもとにした当社の参考計算を表示します(公式ツールそのものではありません)。台帳・SDS・リスクアセスメントの記録を1台のパソコンと社内LANでまとめられます。最終的な判断は、公式ツールの適用条件、SDS、実際の作業条件、必要な測定結果などをふまえて事業者が行ってください。薬品5件まで、無料の体験版をお試しいただけます。
※リスクアセスメントの実施義務は事業者にあり、化学物質管理者はその実施の管理などを担います。本アプリはその作業を支援する道具であり、代行や監査合格の保証をするものではありません。営業のお電話はいたしません。
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本ページは厚生労働省の公表資料に基づく一般的な整理です。法令・対象物質・適用日は改正により変わるため、最新は厚生労働省の一次情報をご確認ください。