RandyLab コラム / 中小製造業の技能伝承 2026年10月6日

ベテランの段取りを手順書に残すとき、
何を書けばいいか

手順を順番に並べただけの手順書は、ベテランが辞めたあとに役に立たないことが多いです。抜けるのは「どこに気をつけるか」と「なぜそうするか」だからです。この記事では、手順書に何を書けば技能が残るのかを、技能伝承アプリに同梱している見本の実際の画面で説明します。

1. 手順の横に「急所」と「なぜ」を書く

同梱の見本のうち、いちばん書き込んであるのは卓上両頭グラインダーの手順書です。工程が25、急所が34あり、その急所すべてに「なぜ」を付けています。

作業手順書の1工程。ワークレストの隙間を3mm以下に調整する工程に、急所・なぜ・危険源・対策・指差呼称が並んでいる画面
見本の工程2。「必ず停止中に調整する」の下に、なぜそうするのか(回転中だと手が巻き込まれる)が書いてある。

「停止中に調整する」だけなら、忙しい日には守られません。「回転中に調整すると、手をワークレストとといしの間に巻き込まれる」まで書いてあれば、理由ごと覚えてもらえます。ベテランが口で言っている注意は、たいていこの「なぜ」の部分です。

2. 危険源には、効く順に対策を付ける

同じ画面の下半分が、危険源と対策です。対策には「除去・工学的対策・管理的対策・保護具」の種類を付けます。

上の工程では、「回転中に調整すると手が巻き込まれる」に付いている対策が「停止・施錠してから調整する」(管理的対策)だけです。そのためアプリが、設備の側で防げないかをもう一度考えるよう、作成者に注意を出しています。厚生労働省の「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」は、法令で定められた措置を必ず実施したうえで、除去(危険な作業の廃止・変更)、工学的対策、管理的対策、保護具の順に検討するよう求めています。手順書に「気をつける」と書いて終わりにしないための仕組みです。

3. 段取り替えの「見分け方」は、4つに分けて書く

段取り替えのように、人によってやり方が違う作業には、中身を空にしたひな形を用意しています。設定値や勘どころは会社ごと・機械ごとに違い、外に出せるものでもないので、中身はあえて入れていません。入っているのは書く場所と書き方の見本です。

段取り替えのひな形の工程2。見るところ・見分け方を、気づくこと・確かめ方・考えられること・まずやることの4列で書く表
段取り替えのひな形。「サンプル」と付いた行は書き方の例で、自社の機械のことに書き換えて使う。

見分け方は「気づくこと」「確かめ方」「考えられること」「まずやること」の4列で書きます。見本の行では、型番の刻印が読みにくいと気づいたら、段取り表の番号と型の刻印を声に出して読み合わせる(確かめ方)、思い込みで持って行かずに台帳で置き場を確かめる(まずやること)、と書いています。新人が迷うのは、異常に気づいたあと何をすればいいかのほうなので、そこまで書いておきます。

4. 覚えたかどうかは、実技で確かめる

手順書を読ませただけでは、できるようになったかは分かりません。アプリの社内技能検定は初級・中級・上級の3等級で、評価者が実際の作業を見て採点します。会社の中で決める検定なので、国家検定ではなく、特別教育・技能講習・免許の代わりにもなりません。

社内技能検定の初級。重大項目が1つでも×なら他が満点でも不合格と書かれ、保護具の着用や手袋を着けないことなどが重大項目として並んでいる画面
グラインダー作業の初級。安全に関わる重大項目は、1つでも×なら不合格になる。

減点式にしていないのは、安全の項目を平均点で見ても意味がないからです。手袋を着けたまま研削したら、ほかが満点でも合格にはしません。合格には評価者と受検した本人の両方の署名を残します。

5. 最初の1件は、教えられる人が少ない作業から

全部の作業を一度に書く必要はありません。教えられる人の人数と、その人が定年まで残る年数を書き出すと、どの作業から残すべきかが見えてきます。紙で数えたい方には、技能伝承の棚卸しシート(A4・無料)を用意しています。

ひな形から作業手順書をつくる画面。いちばん書き込んだ見本と、中身を空にした御社用の器が並んでいる
「ひな形から作る」の画面。まず★の見本を開いて書き方を見てから、自社の作業を書く。

この記事の画面は、無料の体験版でそのまま開けます

技能伝承アプリの体験版は、登録もメールアドレスも要りません。Windows版とMac版(Appleシリコン専用)があり、作業手順書を3件まで作れます。見本とひな形は最初から入っています。製品版は買い切りで¥79,800(税込・1事業場)、月額はかかりません。当社は適格請求書(インボイス)発行事業者ではありません。データはそのPCの中だけに保存し、インターネットにはつなぎません。

社内で購入を検討される方向けに、価格・ライセンス・情報セキュリティ・免責をA4 1枚にまとめた稟議用の資料(PDF)もあります。

技能伝承アプリの詳細と体験版 →

本記事は一般的な情報の整理です。作業手順書の内容、法定資格の要否、教育の内容は、事業場の作業実態と法令にもとづきご判断ください。アプリは作業手順書の作成・教育・技能評価の実務を支援する道具であり、これらを代行するものではなく、監査への合格や法令遵守を保証するものではありません。